日本農村医学会雑誌
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氷水浸漬による寒冷血管反応から見た韓国農民の耐寒性
安 玉善崔 正和
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1997 年 46 巻 4 号 p. 665-678

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抄録

本研究は韓国の農民と都市人の耐寒性水準を測定し, 農民の健康対策をたてる際の基礎資料を得る目的で実施した。
農民81人, 都市人64人を対象として氷水浸漬実験を行い, 寒冷血管反応を観察した。
20.0±2℃, 55±5%RHで被験者の左手中指全体を0℃の氷水に30分間浸漬させたまま, 指の皮膚温度を氷水浸漬10分前から, 浸漬終了後30分まで1分間隔で連続測定し抗凍傷指効を算出した。その他, 寒冷血管反応の特徴を表す項目を測定し, 次のような結果を得た。
対象全例では, 抗凍傷指数は農民が都市人に比べて多少高かったが, 統計的な有意差はなかった。男性の場合, 抗凍傷指数は農民が都市人に比べて多少低かったが, 統計的に有意ではなかった。女性は農民が都市人に比べて氷水浸漬後, 最初の上昇時の指の皮膚温及び, 抗凍傷指効が有意に高く凍傷抵抗性が高かった。氷水浸漬後25分間の指の皮膚温の平均は女性が男性より有意に高かった。年齢別に見ると, 男性の30代が氷水浸漬後25分間の指の皮膚温の平均が他の年齢に比べて最も高く, 氷水浸漬後, 最初の上昇が起きるまでの時間も最も短く, 抗凍傷指数も特に高かった。しかし, 女性の場合は年齢による有意差はなかった。地域別に見ると抗凍傷指数は沃溝が最も高かったが, 統計的に有意ではない。以上のように, 寒冷作業環境に接する機会の多い農民, とくに女性が露出機会の少ない都市人に比べて抗凍傷指数が高いことがわかった。

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