日本農村医学会雑誌
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農作業におけるストレッサーの解析と健康管理に関する研究
上田 厚
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1997 年 46 巻 4 号 p. 718-724

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抄録

本年度研究は, 統一調査票による農業従事者のストレスの実態と要因を他産業従事者や農村地域の非農住民と比較検討することによって明らかにすること, ストレスや満足度を規定する要因とその関連の構造を明らかにすること, 簡便かつ正確に農業従事者のストレスを評価出来るように統一調査票を改良すること, ストレッサーの抽出とストレスを診断するために有用な他の検査方法を検討することの4点を主要な課題として進められた。その結果;
(1) 農業従事者のストレスは, 性・年齢のような身体特性や農作業や農業経営の側面だけでなく, 日常生活や地域の特性に由来する多様な要素によって修飾されていることが示された。
(2) 本研究班による統一調査票は農業従事者ばかりではなく, 他産業従事者のストレス状況およびストレス要因を適切に抽出することが可能であることが示唆された。
(3) 作業者のストレスを生理的, 心理的側面から適切に評価する手法を導入するために, 心拍数連続測定とエゴグラムの測定を採用し, その有用性を示唆する成績が得られた。
(4) 本調査票を有効に活用することにより, 現場に即した実施可能なストレス対策を地域の組織的な活動や作業者自らの個々の能力で構築して行くための手がかりが得られるものと期待された。
(5) 作成された統一調査票のそれぞれの設問を構成する質問項目を因子分析の成績などを参照して削除, 改変して, さらに簡素化された調査票を作成し, 統計的にその有効性と妥当性を検討したところ, 最初の調査票による解析成績と極めて高い相関が得られた。

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