日本農村医学会雑誌
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農村における栄養問題と消化器系諸病態に関する研究
登内 真
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1997 年 46 巻 4 号 p. 725-729

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抄録

農村地域における栄養・食生活状況と消化器系諸病態の実態を調査した結果, 現今の状況では主として飲食物の過剰摂取・過栄養の面が問題であり, 低栄養の問題点は表われてこなかった。
岐阜県で, 山村型農村の方が糖質, 食塩の摂取量が多く, 都市型農村で脂肪, 蛋白質の摂取量が多かった。大分県で, 飲酒習慣を持つ人の減少と, 運動習慣を持つ人の増加が認められた。
栄養状態のパラメーターから, 大腸ポリープと早期大腸癌での過栄養状態が示された。大腸癌の組織発生におけるadenoma-carcinoma sequenceに過栄養状態が関与することが示された。
胃癌のリスク要因として濃い味付けが重要因子であるが, 塩味テストとの高い相関があり, 塩が胃癌発生に関連することが示唆された。
脂肪肝は過栄養状態と密接な関係があり, 各地で増加の傾向にある。脂肪肝は消化器系の病態であるのみならず, 動脈硬化促進病態の一表現型でもあると考えられ, 新たな視点からの対策が必要である。大分県では, この群は健常者より食物摂取量が少なくなっており, 食事療法指導などの対策の効果が表現されていた。
胆嚢ポリープは過栄養状態に関連する病態と考えられた。胆石症は, 地域により栄養状態のパラメーターに健常者との差が一定していなかった。
慢性膵炎, 急性膵炎, 肝硬変症などの肝・膵疾患は飲酒習慣と密接な関連があり, 大酒家, アルコール依存症の比率も高く, 飲酒習慣改善の対策, さらに女性や若年者に対する対策も必要である。

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