1997 年 46 巻 4 号 p. 764-767
側頭動脈炎に慢性硬膜下血腫を合併した1例を経験した。症例は68歳の女性で, 高血圧, 糖尿病を基礎疾患とし, いずれも内服加療中であった。右側頭部痛に続き1か月強の間に発熱・尿失禁・四肢脱力を訴えるようになった。身体所見ではやや錯乱様であるときもあり, 血液検査では著明な炎症所見がみられた。頭部CT検査で右慢性硬膜下血腫が認められ, 右浅側頭動脈生検で巨細胞性動脈炎の所見を得た。硬膜下血腫には穿頭ドレナージによる吸引術を, 次いで側頭動脈炎にはプレドニゾロンの投与を行い, 臨床経過は良好であった。側頭動脈炎, 血腫とも発症時期を決めにくいが, これらが合併し得る可能性は既に報告されている。例えば炎症に伴う血管の脆弱化が, その機序としては推定されるが, 余りに不確定の面が多い。これらの合併例の蓄積が今後にわたり必要である。