日本農村医学会雑誌
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残置薬対策とその効果
蛯原 由里子福田 久美子森 信子桜井 靖堀越 建一冨島 修大串 和子
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1998 年 46 巻 5 号 p. 820-824

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抄録

服薬コンプライアンスは, コンプライアンス不良例を発見し, 服薬指導することで向上させることができるが, その発見は容易ではない。薬を残置する患者は, コンプライアンス不良例が多いと考え, 薬を残置後7日間経過した患者に電話連絡を実施した。また, 処方日数を過ぎても患者が取りにこないため処分する例については,「服薬状況報告書」を作成し, 外来病歴に貼付する方法で担当医に報告した。さらに薬を処分した患者の再来院時に薬剤科窓口で投薬の際に服薬指導を行った。
平成7年1月~3月の3か月間に薬を残置した患者で電話連絡がついた63件中30.6%に服薬コンプライアンスに問題があることがわかった。また, 薬を残置した患者への電話連絡は, 電話連絡をしなかった平成6年8~12月の5か月間と比較すると処分率を0.11%から0.03%へ減少させることができ有効であった。また, 薬を処分した19件について「服薬状況報告書」を用いて担当医に報告した.報告したすべての医師から, 報告書は患者の服薬コンプライアンスを知ることができ有意義と評価された。
しかし, 残置薬の調査で,「薬が出たことを知らなかった」と回答している患者がいたことからも残置薬対策は薬剤科だけでなく診察から医療費支払いに至るすべてのステップの問題としてとらえ, 患者の服薬コンプライアンスの向上を図ることが大切である。

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