1999 年 47 巻 5 号 p. 735-739
症例は38歳, 主婦。肺転移と脈管侵襲 (門脈) を伴う高度進行肝細胞癌で, 化学塞栓療法も効果がみられなくなり, 悪液質となった上, 上部消化管出血を反復し死亡した。内視鏡および剖検所見から, 肝左葉外側区の肝細胞癌が胃体上部前壁に癒着し, その部に一致して生じたU1IVの胃潰瘍からの出血が原因と考えられた。病理組織学的には肝細胞癌の胃浸潤は認められず, 胃への癒着であった。肝細胞癌の癒着により, 胃壁への血流障害をきたし胃潰瘍が生じた可能性が示唆された。