日本農村医学会雑誌
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臭化メチルを用いたハウス内の土壌薫蒸作業における職業曝露と健康影響に関する研究
甲田 茂樹大原 啓志
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1999 年 48 巻 1 号 p. 13-20

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抄録

臭化メチルを用いたハウス内の土壌薫蒸作業に従事する農業者の臭化メチル曝露に伴う健康障害を予防するために, 薫蒸作業前後の臭化メチルのモニタリングと個人曝露測定, 薫蒸方法や保護具の使用, 自覚症状等に関するアンケート調査を実施した。
ハウス内の環境モニタリング結果によると, ハウス開放時でも1,000ppmを超える極めて高い臭化メチル濃度が観測された。ハウス開放に従事した農業者への個人曝露測定結果では57ppmと25ppmと, 許容濃度を遥かに超えていた。高知県内6地区の園芸農家で臭化メチルを用いた土壌薫蒸を行っている農業者164名のアンケート調査結果から, 8割近くがハウス全面薫蒸方式を採用しており, 行政の指導している使用量を遥かに超える臭化メチルを使用しており, 9割以上が薫蒸後5日以内にハウスを開放していた。さらに, 臭化メチル高濃度曝露を防ぐ防毒マスクや防除衣の着用を行っているものはわずかに10%程度であった。薫蒸作業後の自覚症状では, 眼や呼吸器などの刺激症状を訴える農業者が2~6%程度認められた。
現状の臭化メチルを用いた薫蒸作業では短時間で高濃度の臭化メチルに農業者が曝露することが懸念された。臭化メチルによる健康障害を予防するためにも, 臭化メチルの有害性や健康障害に関する教育や安全な使用量の徹底や作業方法の訓練等を実施することが重要である。

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