日本農村医学会雑誌
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農村における尿失禁の現状と対策
杉山 一教
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キーワード: 尿失禁, 農村地域, 高齢者
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2000 年 48 巻 6 号 p. 824-829

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抄録

全国11施設の共同研究で, モデル農村地域の65歳以上住民に, 現在の生活の状態, 日常行動の程度, 治療を受けている疾患の有無, 服用薬剤の有無など高齢者の健康状態に関するアンケート調査と尿失禁をはじめ排泄の状態等に関するアンケート調査を実施した。回収対象者数は男性3,360名 (41.9%), 女性4,369名 (54.5%), 性別不明294名 (3.7%), 計8,023名であった。新潟県調査分は, 2,649名 (男性1,047名, 女性1,493名, 性別不明109名) であった。今回の調査から, 排尿症状に関しては我々の認識以上に女性でも排尿症状を持っているものを多く認めることがわかった。高齢者の12.8%に尿失禁または便失禁をみとめたが, 男性に比較して女性に高率に尿失禁を認めた。尿失禁は一つの型に分類できない複合型を多く認めた。また, 体が不自由なために尿失禁となる機能的尿失禁も多く認めた。尿失禁があっても医療機関を受診せず, 医療側, 福祉側, さらに住民に対する啓発不足を認めた。尿失禁により尿臭や汚れ, 洗濯の苦労, 介護疲れを訴えている介護者の方を半数ほどに認め, 尿失禁者ばかりでなく, 介護者の生活の質の低下を認めた。全国調査と新潟県調査を報告したが, ほぼ同様の傾向を認めた。今後の対応として, 医療側, 福祉側, さらに住民に対して, 尿失禁に対する啓発活動を積極的に行うこと, 医療側と福祉側の尿失禁を含めた排泄に関する情報網を充実させることなどを積極的に展開し, 高齢化社会における住民生活の質の維持に積極的に取り組む必要がある。

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