日本農村医学会雑誌
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維持血液透析患者における虚血性末梢循環障害とankle brachial pressure index (API)
星野 文山添 久美島 健二矢嶋 晃仁五十嵐 真二倉持 元
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2000 年 49 巻 1 号 p. 37-41

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抄録

近年, 維持透析患者の死亡原因の約半数がいわゆる循環器障害によるものとされ, 虚血性末梢循環障害の症状がみられることが多くなってきている. この背景には透析患者に特有の動脈硬化の進展が関与していると考えられている. そこで透析患者の虚血性末梢循環障害の早期診断に役立てるために, 当院通院中の維持血液透析患者に対して足関節-上腕血圧比 (API) を測定し, さらにアンケート調査による自覚的所見, 理学的所見および胸部, 腹部大動脈石灰化の有無を加えて分析調査を行なった. その結果API<1.0を示した患者は全体の31.0%にみられ, API≧1.0の患者に比べ平均年齢, 平均透析期間は多い傾向がみられたが有意差はなかった. 無症状群においてAPI<1.0の患者はその21.2%にみられ, そのなかに足背動脈が触れずかつチアノーゼも認められた患者が含まれていた. また知覚, 運動異常群でAPI<1.0の患者はそれぞれ群全体の35.0%, 45.5%であった. 胸部または腹部大動脈石灰化の有無による分析調査では, API<1.0の患者は両部位とも石灰化を認めない患者の23.8%に, 胸部大動脈弓のみでは22.2%, 腹部大動脈のみでは27.8%, また両部位に石灰化を認めた患者では29.6%にみられた. 今回の結果は, 今後の血液透析患者における虚血性末梢循環障害に対するフットケアに役立つものと思われた.

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