日本農村医学会雑誌
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土浦協同病院救命救急センターにおける院外心肺停止の治療成績
松宮 直樹
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2001 年 49 巻 5 号 p. 733-739

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抄録

院外心肺停止の治療には, 市民, 消防機関, 医療機関の救命処置の連携が必要不可欠であり, これらの質の向上が救命率の向上につながる。本研究では院外心肺停止事例を共通の用語と定義で記録するUtstein styleを用いて土浦協同病院周辺地域で発生した心肺停止症例を分析し, 治療上の課題と対策を求めた。症例は555例, 心原性心停止が206例 (37%), 非心原性心停止が309例 (56%), 原因不明が40例 (7%) であった。422例 (76%) が救急治療室で死亡, 133例 (24%) が心拍再開して集中治療室に入院した。125例が入院中に死亡, 6例が社会復帰できる状態で退院, 2例が植物状態で転院した。
Utstein styleに従った分析では, 目撃された心原性心停止125例のうち35例 (28%) が心拍再開したのに対し, 目撃されなかった心原性心停止69例で心拍が再開したのは6例 (8.7%) であった (p<0.01)。目撃された心原性心停止患者のうち初期心電図所見が心室細動であった26例では12例が心拍再開し (p<0.05), 5例が社会復帰した (p<0.05)。バイスタンダー心肺蘇生が行われた目撃された心原性心停止14例中10例が心拍再開し, 4例が社会復帰したのに対し, バイスタンダー心肺蘇生が行われなかった心原性心停止111例中, 心拍再開したのは25例, 社会復帰したのは1例であった (p<0.01)。
救急救命士が出動した心停止症例では46例中17例 (37%) が心拍再開し, 2例 (4.3%) が社会復帰した。一般救急隊員のみが出動した心停止では, 116例中17例 (14.7%) が心拍再開し, 4例 (3.4%) が社会復帰した。救急救命士の出動の有無は, 院外心肺停止患者の心拍再開率と関連したが (P<0.05), 社会復帰率とは関連しなかった。
これらの結果は, 当院周辺地域の院外心肺停止の救命率の向上にはバイスタンダー心肺蘇生の施行率を高めるための市民への心肺蘇生の啓蒙と救急救命士の充足と救命技術の質の向上が必要であることを示している。

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