日本農村医学会雑誌
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わが国の食糧自給に関する研究 (2)
椎貝 達夫藤澤 忠光佐藤 納穂子小谷野 知美
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2001 年 49 巻 6 号 p. 852-862

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抄録

日本のエネルギーベース食糧自給率は40%前後まで低下している。取手市の住民を対象としたアンケート調査では, 成人の83%, 高校生の45%, 中学生の54%がこの低い自給率を「心配」と答えた。
世界の食料生産は地球温暖化の影響もあり, 今後需要に応じられるか不安である。日本周辺の政情も安定していないから, 上一時的にせよシーレーンが確保できず, 輸入が途絶えるおそれがある。
このように食糧自給率低下は国の基本的課題として, 討論されるべきだが, 日本のマスメディアはほとんど取り上げようとしない。農業政策の不合理と非難するが, 危機管理上どう対処するのか示すことはない。
1993年以来, GATT, WTOで日本はコメの自由化を迫られ, 譲歩した結果, ミニマムアクセス, コメの関税化を承認した。
米国を中心とした自由貿易の拡大路線に日本は乗せられており, もし食糧安全保障を主張し, コメ輸入に反対すれば日本の工業製品輸出が制限されるのではないかと, 日本政府, 日本のマスメディアともに恐れている。
コメ輸入自由化により, 輸入米が増加, やがて日本の稲作は破壊的な打撃を受ける。島国である日本があるレベルの食料自給を主張することは, 米国やケアンズグループを除いた諸国には理解されやすい。途上国やNGOの同意をとりつけ, WTO協定の見直しをすすめるべきである。
また農村は日本の原風景でなければならないのに, 全国の農村の建築様式や色彩の乱れははなはだしい。全国に10~20か所の「モデル農村」を作ることを提案したい。そこに原風景が出現すれば, そこを慕って多くの都会人が訪れ, 農村のイメージは良くなり, グリーンツーリズムが実現する。「モデル農村」が評判を呼べば原風景復帰を望む農村が増え, 農村の景観は落ちついたすばらしいものになるだろう。
また農村は元来循環型社会の代表であったが, 今そこへ戻る運動も大切だろう。家畜の屎尿, わらなど, 農村から排出される廃棄物の再利用は欧州で盛んで, バイオマスをメタンガス, エタノールに変える技術が開発され, 実用化されている。このような技術を導入し, 都市よりいち早く循環型社会を目指すことが大切である。
日本農村医学会としては, コメをはじめとする糖質摂取の減少, 動物性食品摂取の増加が最近の糖尿病の激増と関連していないかどうか, 長期の前向き疫学調査で明らかにすべきだ。全国の関連検診センターが協同すれば不可能ではない。現在の食生活が健康を害していることが明らかになれば, コメを中心とした食習慣が復活し, コメ需要が伸び, 食糧自給率が上昇するだろう。

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© (社)日本農村医学会
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