日本農村医学会雑誌
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農村における生活習慣病予防に関する保健・医療・福祉情報の統一化についての研究
藤原 秀臣
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2001 年 50 巻 4 号 p. 591-604

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抄録

生活習慣病の増加や高齢化の進行は従来の検診活動における早期発見, 早期治療の概念を変化させつつある。厚生連は全国に広く関連施設を有しており, 各地方の特色に基づいて全国レベルで住民と直結した保健・医療・福祉活動を展開しているが, 地域住民の健康を守り, より良い医療を提供するためには厚生連病院として市町村と連携し情報を共有し, 住民へ還元していくことが今後の課題である。そのためには情報の統一化と普遍性, 情報の集積, 情報の解析と活用の手法を確立する必要がある。平成11年度の本研究では4施設での検診データを収集し, 延べ44,817件が登録され, 膨大な資料を一括して統一データベースとして保存し解析することが可能となった。今年度は各施設における2000年4月から2000年10月の問の均質な検診データを収集し, 29,425件の新たなデータベースを作成した。今回はデータの解析にあたっては, 生活習慣病関連測定項目の異常値の設定を行い, 年齢区分を若年者, 高齢者に分けて地域毎に比較検討した。その結果, 検診受診者は各施設ともやはり女性の比率が約60%と高かった。島根では高齢者が多い傾向がみられ, 70歳以上が52%を占めていた。一方, 土浦では70歳以上が7%と最も低く, 平鹿, 旭川は20%であった。測定項目についてはそれぞれの解析を行ったが, そのひとつである総コレステロール値は各施設とも女性が高く, 特に島根では男性185.2mg/dlに対して女性は207.6mg/dlと男女差が顕著であった。全体では女性は207.7mg/dlと男性190.8mg/dlに対して高値であったが, 男性は高齢になると下降するのに対して, 女性は高齢になると上昇する傾向がみられた。また240mg/dl以上の高コレステロール血症の頻度は, 各施設とも女性で高く, 特に高齢者女性での頻度は高く, 男女差が顕著であった。他の測定項目についても同様の解析を試みたが, 地域特性, 年齢, 性差などの解析が容易であった。さらに今回は生活習慣病の疫学調査の基本となる生活習慣調査票も統一したものを作成し調査を開始したが, 食生活の詳細や治療の有無の調査も加える必要があると考えられる。今後の課題は, 生活習慣病ハイリスク者を抽出して重点的に生活指導していくこと, データの収集を他の厚生連病院や関連市町村に拡大し, 全国レベルで長期に亘って生活習慣病予防に活用していくことなどである。

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