2002 年 51 巻 2 号 p. 89-94
うつ病患者の中には, 頭部MRIで無症候性 (潜在性) 脳梗塞が発見されるMRI-defined vascular depression (VD) があり, その臨床経過中に, うつ病以外の精神障害と神経障害の合併が多いことがこれまでの研究で明らかになった。この結果をふまえて, MRI. definedVD患者の3年間の臨床経過と, 初診時の危険因子を調査し, 初診後3年間に精神障害または神経障害を合併した患者群と合併しなかった患者群の危険因子を比較検討する。これにより, 合併症の危険因子が何であるかを明らかにすることを本研究の目的とした。結果的には, 症例数の不足により新知見は得られなかったが, 今後, 前方視的な研究デザインによる検討を行うことにより, 例えば高血圧等の生活習慣病を予防することが, MRI上の無症候性脳梗塞, 臨床症状を有する卒中発作, 高齢発症のうつ病, せん妄や痴呆等の精神症状, あるいはこれらの合併, といった障害を包括的に防ぐということが実証されるかも知れない。