農協の系統組織に所属する厚生連勤務医が職場環境と医療情勢をどのように考えているかを愛知県厚生連9病院の医師を対象にアンケート調査を行った。平均勤続年数5年未満の者が多く, 日本の農業の現状と農村医学についての理解は不十分であるが, 厚生連での診療業務遂行と処遇には概ね満足している。先端医療技術として脳死臓器移植には理解を示すが, クローン人間生産には反対であり, カルテの開示, EBM, クリニカルパス, DRG/PPS, 医療情報システムの導入など情報開示や医療の標準化に関する事項の取り組みには前向きである。医療ミスの経験は67%に上り, リスクマネージメントの必要性を痛感している。医療訴訟の増加の原因として患者の権利意識の向上を一番にあげるとともに, 医療がサービス業であるとの認識も深めつつある。多くの医師の組織帰属意識は大学医局にあり, 大学病院の変革に関心を抱いている。平成16年から義務化される臨床研修制度については制度の不備を問題視しているが, 自病院での受け入れ体制を整えつつある。高齢者医療の改革を支持し, JAと連携して介護事業に取り組むことを必要としている。厚生連で生涯勤務する希望者が多い。わが国の農業政策と医療政策に市場原理が反映され, 国民のニーズが多様化する状況のなかで, 以上の厚生連勤務医の意識をもとに今後の厚生連医療のあり方を考察した。