26 巻 (1989) 1 号 p. 23-33
痴呆患者65例を対象に実用コミュニケーション能力検査を行い,以下の結果を得た.
1) 痴呆の重症度とコミュニケーション能力は高い相関を示した.
2) 痴呆では複数の情報処理ステップを必要とするコミュニケーション活動は早期から障害されるが,高度に自動化されたコミュニケーション行動は重度の患者でも保たれていた.
3) 脳血管性痴呆群48例と老年痴呆群17例を比較した結果,老年痴呆群では前者に比べて状況文脈の利用など抽象的思考力を要求する下位検査の困難が目立ったほか,検査場面で不安状態を示す患者が多かった.
4) 実用コミュニケーション能力検査の総得点をマッチさせた失語症群と痴呆群を比較した結果,痴呆群では状況文脈の利用,数と計算の能力,視空間情報の処理能力等が関連する下位検査の成績が低く,失語症群では言語の理解・表出に直接関わる下位検査の成績が低かった.