2010 年 47 巻 12 号 p. 867-873
本研究は,機能的電気刺激の視点から嚥下障害患者の喉頭挙上を支援する表面電極刺激方法として,喉頭挙上筋群の内,主に顎二腹筋と茎突舌骨筋の刺激について検討した.被験者は,20 歳代の健常者15 名と50~70 歳代の嚥下障害患者4 名(うち3 名は日を変えて2 回施行したためn=7)とした.液体嚥下は座位で水分約3 mlを嚥下させ,喉頭挙上動作をデジタルビデオカメラで計測した.銀織布製の表面電極を筋腹上に貼付し,電気刺激を行った.最初に健常者3 名で刺激強度に対する喉頭挙上の動作特性を調べた.喉頭挙上動作の軌跡は刺激強度上昇に伴い挙上距離が増加し,挙上と下制の軌跡がやや異なるヒステリシスループを描いた.次に,健常者12 名と嚥下障害患者4 名(n=7)の電気刺激による喉頭挙上では,液体嚥下時のそれぞれ平均76 %および87 %の挙上距離が得られた.表面電気刺激で嚥下反射時の喉頭挙上に近い動作が再建可能であることが示唆された.