近年の高齢化社会に伴い,人工股関節置換術を受ける患者の平均年齢も上がりつつある.若年者より増加率は低いものの高齢者でも筋力の向上は可能であり,筋肥大も確認されている.比較的虚弱な高齢者に対しても,基本動作能力改善のために積極的に運動療法を行うことを考慮すべきである.無理に負荷の大きすぎる運動を行えば,関節痛を引き起こしたり,循環器系に過剰な負担をかけてしまったりすることがあるので,じっくり時間をかけて運動を行うように説明をする.起き上がり動作や立ち上がり動作,移乗,移動などの日常生活における基本的な動作にはある程度の筋力や持久力が必要で,筋力や持久力の維持と改善は運動療法として重要な役割を持つ.