2017 年 54 巻 9 号 p. 652-656
嚥下運動は高度に組織化されたsequentialな運動であり,随意的要素および不随意的要素が混在したものである.その神経系のプロセスとしては,口腔内をはじめとする感覚入力,食認知・食欲を含めた認知機能,さまざまな情報の統合・分析,感覚フィードバックを含む嚥下運動,の要素からなり,延髄のみならず大脳も関与している.臨床的には,このプロセスの異常の部位によって,異なるパターンの嚥下障害をきたすことが知られている.現在の医学では,嚥下障害の治療およびリハビリテーションは困難を極めることが多いが,嚥下運動の神経学的メカニズムのいっそうの解明により,新たな治療法・リハビリテーション法の開発が期待される.