2018 年 55 巻 12 号 p. 978-983
嚥下障害に対する鍼灸治療に関して,海外では有効性を示した研究報告が数々報告されている.鍼灸治療は基本的に患者の状態に応じて治療法を選択するオーダーメイド医療であるため治療の標準化は難しい.本邦では主に太渓と足三里という下肢の経穴に刺激を加えることで嚥下反射が改善するという研究が報告されている.一般の医療・介護施設で通常の鍼灸治療を行うことはさまざまな面で困難を伴うが,簡便に用いることのできる円皮鍼が有用となる可能性がある.鍼灸治療の作用機序はいまだ十分に解明されておらず,鍼灸が嚥下障害に対する治療法の選択肢として広く認識されるには,今後さらに研究を進め,臨床経験を蓄積することが必要である.