脊髄損傷による四肢麻痺・対麻痺では,脳からの運動制御指令が損傷高位で途絶するため末梢に伝達されず,随意的筋収縮ができない状態であることが多い.機能的電気刺激(FES)は,プログラムされた動作刺激を末梢運動神経とその支配筋に行う医用工学的技術で,麻痺からの回復促進や動作再建などに有用である.FESにより,四肢麻痺上肢の手指把持動作再建や,対麻痺起立歩行再建などが可能であり,新しい表面電極FESシステムが国内で普及しつつある.将来的には,多チャンネル同時刺激可能な完全埋め込み電極の実用化,BMIやリハビリテーションロボット技術の発展などと相まって,FESは脊髄損傷再生医療におけるリハビリテーション治療において,重要な役割を担うことが期待される.