2025 年 62 巻 12 号 p. 1245-1251
目的:発達障害児の眼球運動の稚拙さは定型発達児に比較し発生頻度が高い.「気が散りやすい」「文字を飛ばして読んでしまう」などの彼らの困り事の1つに眼球運動の苦手さが挙げられている.問題が顕在化される就学前に発見し治療することが望ましいが,現状,指標となる発達過程の眼球運動は明示されていない.そこで定型発達児の眼球運動の定量的評価の開発を試みた.
方法:視線解析装置に試作の眼球運動刺激呈示動画を取り込み,年長児6名の眼球運動の計測を行った.
結果:計測中に注意集中が途切れることもみられたが,6名全員が課題とした眼球運動を計測できた.固視では,被験児6名の平均をみると,視標3°以内に80.8%が含まれた.水平サッケードは,全例で視標呈示後に速い眼球運動で視標を固視する動きがみられた.3試行目について6名の各波形では,素早い視線の移動,適切な眼球運動量,視標呈示時の視線の維持が観察され,サッケードの習熟が確認された.水平パスートは,6名の眼球運動の加算平均波形において,5試行中3試行目で各測定点における標準偏差が最小となった.
結論:測定中は被験児の注意を維持させることに工夫を要したが,その一方で,サッケード,パスートともに一定回数を継続して測定することで,学習効果が観察された.比較的早期の段階で学習効果を示してくることは,今後定型発達児の特徴として捉えられると思われる.