日本胸部疾患学会雑誌
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アスベスト暴露による良性の再発性両側性血性胸水―benign asbestos pleural effusion―の1症例
宮崎 幸重重野 秀明朝長 昭光河野 茂神田 哲郎浅井 貞宏広田 正毅斉藤 厚原 耕平綾部 公懿富田 正雄
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1984 年 22 巻 11 号 p. 1021-1026

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抄録
62歳の男性. 25年間のアスベスト暴露の職歴があり, 昭和57年5月8日, 胸痛と右血性胸水の精査の目的で第1回目の入院となる. 右下肺の無気肺があり, 胸膜剥離術を含め種々の検査を行ったが確診は得られなかった. 術後経過は良好であったが, 昭和58年1月26日胸痛と左血性胸水を認めたため当科へ再入院した. 呼吸困難もなく捻髪音は聴取されず, 胸部レントゲンでも下肺野の線維症の所見は軽度で, 肺機能の低下も著明ではなく, 診断に苦慮した. しかし, 喀疾細胞診にて, アスベスト小体が認められ, 更に, 肺胞洗浄液と気管支鏡下肺生検標本においてアスベスト小体が多数証明された. 肺結核, 悪性腫瘍, 各種感染症, 膠原病, 膵病変, 肺梗塞などは見られず, 本症例の再発性の血性胸水の原因は, アスベストの存在によるものと考えた.
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