日本胸部疾患学会雑誌
Online ISSN : 1883-471X
Print ISSN : 0301-1542
ISSN-L : 0301-1542
急性膵炎と肺
急性膵炎がみられた22剖検例における肺の形態学的変化特にトリプシン静注を受けたウサギ肺病変との比較
夏目 妙河口 幸博井口 千春坂田 一美渥美 清永原 貞郎
著者情報
ジャーナル フリー

1984 年 22 巻 8 号 p. 666-675

詳細
抄録
急性膵炎または膵脂肪壊死が認められた22剖検例について, 血清アミラーゼ値が151Somogyi単位以上群 (12例) と, 以下の群 (10例) にわけて, 膵と肺を検索した. 肺胞内浮腫, 小動脈から細静脈に白血球集積を, また小動脈から細静脈にかけて, フィブリン血栓および血小板血栓を認め, 血管周囲結合織には浮腫とリンパ管拡張がみられた. また血清アミラーゼ値上昇群には肺胞内硝子膜形成もみられた. 一方ウサギに4.5mg/kgのトリプシン静注後の肺には, 剖検例と同様に, 肺血管内白血球集積, 血栓形成, 血管周囲結合織における浮腫がみられたが, 静注24時間後には血小板凝集を認めた. 従ってヒトの急性膵炎に合併する肺病変は, ショック肺症候群の所見に一致する. その発生病理の主役は, トリプシンが血液中にはい, 血液凝固系および補体系両者を活性化と思われる. 急性膵炎の肺合併症は避け難いもので, 治療上肺血栓症と白血球集積の予防に関心を向けることを再確認した.
著者関連情報
© 日本呼吸器学会
前の記事 次の記事
feedback
Top