症例は19歳の女性. 気管支喘息として約1年10ヵ月, ステロイド剤を含む治療を受けたが, 改善しないため当科に入院した. 患者はアレルギー疾患の家族歴を有し, アストグラフでも気道過敏性があるように思われたものの, 喘鳴出現時に1秒量やPaO2の低下はなく, 気管支拡張剤の吸入でも呼吸機能に変化はみられず, 喘息は否定的であった. また, 患者の喘鳴は喉頭部で最も著明に聴取され, 多くは吸気性の呼吸困難を伴い, フローボリューム曲線は, 吸気時の流速が低下していた. さらに, Laryngos-copy では, 声帯の内転位固定と後方の僅かな間隙が認められ, 以上の所見より Vocal cord dysfunction と診断された. 本症例の喘鳴は, 不幸な生育歴を背景とする転換反応に起因するものと考えられ, 心身相関の理解やセルフコントロールの習得を中心とする心身医学的治療によって, 薬剤不要な状態にまで改善した.