1992 年 30 巻 5 号 p. 959-963
症例は35歳, 男性で硫酸ジメチルの蒸気吸入による重度の中毒症状を発現したのち遷延する呼吸困難を主訴に入院した. 喘鳴, 多量の喀痰や発熱も呈し, 緑膿菌による肺炎の合併を認めた. 気管支鏡検査では気管・気管支の内腔狭小化を伴う高度の気道炎症を認めた. 画像上, 両肺野に粒状陰影が長期間に亘り存在したがこれに関しては経気管支肺生検にて細気管支の肉芽性炎症像が証明された. 広汎な下気道病変に起因する呼吸困難に対して副腎皮質ステロイド薬治療を試み, 自他覚的に顕著な改善が認められた. 硫酸ジメチル中毒は本邦ではまれであるが, その臨床的特徴や治療についても考察を加えた.