1994 年 32 巻 4 号 p. 339-343
胸部単純像で腫瘤状陰影および血清CEAの高値を示し, TBLBで診断した原発性肺クリプトコッカス症の1例を報告した. 症例は43歳, 男性. 胸部異常影で当科を紹介された. 初診時の血清CEA値が7.0ng/mlと高値を示したが, 病状の軽快とともに0.8ng/mlに低下したこと, 免疫染色で肺胞表層に陽性結果を認めたこと, 消化管等に所見のないことなどから, クリプトコッカス症の肺病変が血清CEA値の上昇に関与していたものと考えた. 肺クリプトコッカス症は肺癌と鑑別困難な陰影を呈することが知られている. 本例でも, 画像所見, CEA高値のため肺癌との鑑別が問題となったが, TBLBで確診しえ保存的治療を選択できた. 積極的に気管支鏡下に生検を行い, 組織診を得るよう試みるべきである. Fluconazole は本症に有用性を期待し得る.