1995 年 33 巻 12 号 p. 1430-1435
胸水貯留を伴った原発性肺クリプトコッカス症の1例を報告し, 併せて当院で経験した肺クリプトコッカス症5例について臨床的検討を行った. 症例は34歳健常男性. 入院時, 右下肺に塊状影とともに少量の胸水貯留を伴っていた. 胸水の培養で cryptococcus neoformans を検出し, 経気管支肺生検で原発性肺クリプトコッカス症と診断した. Flucomzole と miconazole の併用治療で改善傾向を示したが, 約2ヵ月後同側に大量の胸水貯留を認めた. ドレナージと抗菌薬の併用治療で改善し, 診断と治療効果の判定に血清および胸水クリプトコッカス抗原価の測定が有用であった. 本例を含めて, 当院で過去5年間に経験された肺クリプトコッカス症5例の検討では, 髄膜炎合併例はなく, 臨床症状, 検査所見は病巣が広範囲な例にのみ陽性であった. 診断は, 全例が経気管支肺生検組織標本の特殊染色によって得られ, アゾール系薬剤を中心とした治療で改善した.