日本胸部疾患学会雑誌
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菌球中で itraconazole が高濃度を示した肺アスペルギルス症の1例
丹羽 宏山川 洋右近藤 薫桐山 昌伸近藤 知史可児 久典正岡 昭
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1996 年 34 巻 1 号 p. 67-70

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抄録
症例は66歳女性. 菌球を伴う肺アスペルギルス症の診断で, 経口的に itraconazole 100mg/dayを8ヵ月間投与した. 軽度の膿性痰の減少はみられたが, 発熱は継続し, 胸部レ線所見の改善も得られなかったため空洞切開, 開窓手術を施行した. 組織学的には菌糸を認めたものの培養では陰性であった. 手術時に得られた体内の本剤の濃度は, 血中249ng/ml, 肺組織中81ng/g, 菌球中837ng/gと, 菌球中で極めて高値を示しその効果を裏付けていた. 菌球中で高濃度を示した理由として, 本剤は膿性分泌液中で高濃度となること, 本例のように空洞壁から根を伴い侵襲性に増殖するタイプでは薬剤が根を通して移行しやすいこと, 破壊された菌体中の脂質成分に脂溶性の本剤が溶解した可能性とが考えられた.
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