1997 年 35 巻 10 号 p. 1104-1107
症例は64歳, 男性. 成人期以降労作時呼吸困難を自覚し, 8年前健診で肺動静脈瘻と診断されるも放置していた. 発熱と意識障害が出現し, MRIにてリング状エンハンスメントを示す多発性低信号腫瘤を認め, 多発性脳膿瘍と診断された. 左肺には長径3cmの血管瘻と拡張した舌区の流出入血管2本を認めた. 本例は家族歴はないものの, 繰り返す鼻出血と消化管出血があり, Rendu-Osler-Weber 病を合併していた. 抗生物質投与にもかかわらず脳室穿破のため緊急手術となった. 肺動静脈瘻の自然経過例の報告は少なく, 治療時期についての定まった見解はないが, 本例のように, 放置すると高齢時に至死的な合併症を呈する危険性があるため, 早期に積極的な治療が望ましいと考えられた.