日本胸部疾患学会雑誌
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AAV vector の遺伝子発現に対するDNAトポイソメラーゼI阻害剤の効果
寺本 信嗣松瀬 健大賀 栄次郎片山 弘文福地 義之助大内 尉義
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1997 年 35 巻 12 号 p. 1312-1317

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抄録

Adeno-associated virus (AAV) vector による培養ヒト気道上皮細胞への遺伝子導入に対する DNA topoisomerase I 阻害剤 (camptothecin: CPT) の効果について検討した. AAV vector 感染前にCPT処置を行うことにより, 感染効率 multiplicity of infection (moi) 1~100の範囲では AAV vector による遺伝子導入効率は約1.5-10倍に増加した. この効果は0.1~100μMの範囲ではCPTの濃度依存的に増加した. しかし, AAV vector 感染後にCPT投与した場合は明らかな効果はなかった. AAV vector による遺伝子導入はDNA合成期 (S期) の細胞で促進されることから, CPTの細胞周期への影響を検討したが, CPT処置によってS期細胞数は不変ないし減少した. 従って, CPTの遺伝子発現増強作用は, 細胞周期に対する影響ではなく, 細胞内の DNA polymerase などの酵素群の活性亢進などの細胞機能の変化を介している可能性が示唆された.

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