日本放射線技術学会雑誌
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1. 線量プロフィールの平坦度および対称性について(外部放射線治療装置の保守管理プログラム-その 2-)
沼口 健治
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1994 年 50 巻 6 号 p. 759-762

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抄録

線量プロフィールの対称性および平坦度の点検は, 保守管理プログラムの中のごく一部である.しかし, そのごく一部のQCを実施するにも時間と労力, さらに測定機器などを必要とする.腫瘍学会を中心に, 本邦における放射線治療施設の実態調査などが行われ, その集計結果も報告されているが, 内容を見る限り, 設備も人的資源のレベルや数も, 欧米のそれとは比較にならないほど寂しいのが現状である.また, 専門の放射線治療医のいるごく一部の施設を除くと, 病院管理者などにこの方面の重要性に対する理解の欠如が多く見られ, このことも保守管理プログラムを遂行する上で大きな障害となる.保守管理プログラムの「まえがき」にもあるように, このプログラムは外部放射線治療装置のQCを実施する上での基準を示すもので, 必ずしもこのプログラム通りに実施することを義務づけたものではない.肝心なのは, この本の内容を熟知した上で施設に応じたプログラムを作成し, それに従って実行することであろう.保守管理プログラムの内容で, 筆者なりに多少疑問に感じるところがいくつかある.耳なれない用語, 説明の不足, 点検の種類などがそれである.点検の種類では, 「簡単な点検」と「精密な点検」とに分けられ, それぞれに点検の方法や点検の条件, 点検の頻度が与えられている.いずれの点検でも, フィルム法と電離箱法が精度的に同一視されているように思われる.施設の事情に配慮してのことと考えられる.しかし, フィルム法は比較的簡単に利用でき, 平坦度や対称性の定性的な傾向をつかむ上では有用な反面, 精度的に劣るので定量的な評価には難点がある.点検の方法や許容範囲などの一部に意味が釈然としないところがあったので, そこは筆者なりに解釈した.このプログラムでは, 広義の平坦度が対称性symmetryと平坦度flatnessに明確化された.日常の点検においては, 対称性の崩れがないかどうかの経時的な点検を行うことが重要である.筆者は, 過去に数社の装置において, 経時的ならびにガントリ角度に依存した対称性の崩れに苦い経験を持つので, 特にこれらの点検を重視したい.いずれにしても, 各施設におけるQC, QAプログラムの作成や実施の際には, 是非とも本書を活用していただきたい.情熱をもって臨むことこそが, 放射線治療, ひいては放射線治療成績の向上につながるものと信じたい.

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© 1994 公益社団法人 日本放射線技術学会
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