2024 年 80 巻 8 号 p. 837-849
【目的】本研究では,動画像から人間の姿勢を推定する技術(以下,姿勢推定手法)とRGB画像を取得できる2台のカメラを組み合わせ,ポジショニング時の体位を取得することで,頭部X線撮影をシミュレートするシステムを提案する.【方法】カメラで撮影したポジショニング後の正面と側面の画像から姿勢推定手法を用いて正中矢状面(median sagittal plane: MS),体軸断面(axial plane: AX),眼窩耳孔線(orbitomeatal baseline: OM)の角度を取得し,結果に応じたX線画像を表示する.【結果】姿勢推定手法で取得した特徴点の座標データをもとに,ポジショニング時の頭部の傾きを判定することができた.人体を模擬患者とした撮影実験では,頭部の傾きが大きくなると測定誤差は大きくなったが,正しくポジショニングされたときの各軸の測定誤差の平均値は,MS 0.9°,AX 0.8°,OM 1.5°であった.【結語】姿勢推定手法を用いることで,X線撮影時のポジショニング精度を評価でき,シミュレータシステムとしての可能性が期待できる.