論文ID: 2022-1256
【目的】散乱線補正処理における撮影後の設定撮影距離の変更が,胸部ポータブルX線画像の画質に与える影響について検討する.【方法】FPDに入射する直接X線量が同等となる三つの実撮影距離とmAs値の組み合わせで胸部ファントムを撮影した.撮影後に設定撮影距離を実撮影距離に変更しなかった群(A群)と変更した群(B群)に分類した.物理評価としてコントラスト比と粒状性(SD)の測定を行った.視覚評価としてコントラスト,粒状性,総合評価の三つを評価項目としたシェッフェの一対比較法と肺野内の模擬結節影を信号としたROC解析を行った.【結果】A群ではコントラスト比とSDが変化したが,B群では変化は小さかった.一対比較法ではすべての評価項目においてA群で有意差が認められたが,B群では有意差が認められなかった.ROC解析では有意差は認められなかった.【結語】撮影後の散乱線補正処理の設定撮影距離の変更により,実際の撮影距離が変化した場合でも,胸部ポータブルX線画像のコントラストと粒状性を一定に維持できる可能性が示された.