2007 年 68 巻 1 号 p. 1-7
目的 : 胸部食道癌手術の周術期栄養管理において, 術後早期経腸栄養 (EN) の安全性を検討し, 当科で行っている高カロリー輸液 (TPN) を用いない術後早期ENと末梢輸液による管理について報告する. 対象 : 2002年9月から2005年12月に, 胸部食道癌に対して開胸開腹食道亜全摘術を施行した90例中, ENと末梢輸液で管理した32例. 結果 : ENは25例 (78.1%) で術後1日目に, 6例 (18.8%) で術後2日目に開始した. 術後循環動態の変動をきたした症例の増加はなく, TPN症例と比較しても術後経過や合併症に差はなかった. ENの合併症は腹部膨満や下痢を認めたが, いずれも軽症であった. また, EN症例で術後体重減少が抑制される傾向にあった. 考察 : 胸部食道癌に対する開胸開腹食道亜全摘術後においても術後早期ENは安全に施行可能であった. 当科における術後栄養管理はTPNからTPN・EN併用, そしてEN・末梢輸液へ移行したが, 術後経過・合併症に差はなく, 妥当な変遷と思われた.