2007 年 68 巻 1 号 p. 196-200
症例は68歳の女性. 2006年2月背部痛, 冷汗を伴うショック症状のため当院に救急搬送された. 腹部エコー, CTで上腸間膜静脈から肝内に広汎な門脈ガスを認めた. 腸間膜血管の血流障害による壊死を疑い, 腹部血管造影を行ったが, 特記事項はなかった. ショックから離脱し理学所見にも乏しく, 保存的加療を選択した. 入院翌日のCTで門脈ガスは減少したものの, 回腸から上行結腸にかけての浮腫や腹水が出現したため緊急開腹術を施行した. 回腸末端から50cm程度口側に斑状に壊死した回腸を認め, 病変部位を含めた結腸右半切除を行った. 術後経過は良好で, 術後第12病日軽快退院した. 術後病理組織でも血管内に血栓形成を認めず, 非閉塞性腸間膜虚血症 (NOMI) と診断した. 門脈ガス血症は予後不良の徴候であり, 本例のような著明な門脈ガスを呈したNOMIで経時的変化を追えた症例は稀であり文献的考察を加え報告する.