2007 年 68 巻 11 号 p. 2783-2787
症例は55歳, 女性. 動悸と下血を主訴に救急外来を受診. 血液生化学検査ではHb4.8g/dlと貧血を認め, CEA25.5ng/mlと高値を示していた. 消化管出血を疑いGIFとCFを施行したが出血源は不明であった. 経口的に小腸ファイバーを施行したが到達した上部空腸に異常なく, 同時に施行した小腸造影で空腸に境界明瞭な隆起性病変を認めた. 骨盤CTでは骨盤内左側に45mm大の腫瘤が確認された. 以上より原発は特定不可の悪性腫瘍が考えられ開腹手術を施行した. Treitz靱帯から160cmの空腸に4cm大の壁外発育型の腫瘤を認め, 小腸を20cm部分切除した. 病理組織診断では固有筋層由来のSMTでありc-kit (+), CD34 (+) で小腸GISTと診断した. CEA染色を行ったところ腫瘍本体は染色されなかったが腫瘍近傍の潰瘍を形成した小腸粘膜にCEAの発現がみられた. GISTと腫瘍マーカーの関連を示した報告は過去にほとんどみられず, 貴重な小腸GIST症例と考えられた.