68 巻 (2007) 4 号 p. 869-873
索状物による絞扼性イレウスはしばしば経験する疾患であるが, 開腹既往のない症例は比較的稀である. 今回われわれは, 開腹歴のない小網索状物による絞扼性イレウスの1例を経験した. 症例は31歳, 男性. 既往歴に特記すべき事項を認めず, 開腹歴もない. 突然の上腹部痛を主訴に当院を受診し, 絞扼性イレウスの診断で緊急手術を施行した. 肝下面に癒着した小網から形成された索状物により, 小腸が約50cmにわたり絞扼されていた. 小腸は鬱血による浮腫状変化を認めたが, 絞扼解除により血流は回復し腸切除を回避できた. 索状物の病理所見は, 軽度の炎症細胞浸潤を伴う脂肪組織であり小網として矛盾しなかった. 原発性イレウスにおける索状物の原因として種々の報告を認めるが, 小網からなる炎症性索状物による絞扼性イレウスの報告例は, われわれが検索する限り認めなかった. 稀な症例と考えられ, 若干の文献的考察を加えて報告する.