日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
症例
電気メスにより胃内ガス小爆発をきたした胃内異物 (乾電池) の1例
熊沢 伊和生土屋 十次立花 進川越 肇名和 正人浅野 雅嘉
著者情報
ジャーナル フリー

2007 年 68 巻 6 号 p. 1426-1431

詳細
抄録

症例は39歳, 男性. うつ病にて治療中. 平成16年11月乾電池を嚥下し腹痛を主訴とし3日後初診. 臍左側部に圧痛, 白血球増多・CRP陽性, 腹部単純撮影で胃内に乾電池の陰影を多数認めた. 乾電池胃内異物の診断で同日開腹術を施行. 電気メスで胃前壁の切開を進めると青白い炎を伴った小さな爆発音を認めた (臓器損傷なし). 粘膜所見は多発潰瘍を伴う腐食性胃炎を認めた. 単三乾電池29個, 単四乾電池2個を回収. 乾電池両極はほぼ融解していた. 術17日目に軽快退院. 本邦での単三乾電池の異食報告例は全て精神疾患患者だった. アルカリ乾電池は消化管内で化学熱傷による粘膜障害と, 化学反応による水素の発生を惹起する. 胃切開時の爆発は消化管閉塞例に多く, 本邦では全て胃内異物例で起きていた. 医療事故防止上結腸切開時と穿孔性腹膜炎での腹膜切開時, そして腸閉塞, 緊急手術, 特に異物摘出での消化管切開は電気メスを使用しないことが推奨される.

著者関連情報
© 2007 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top