2007 年 68 巻 7 号 p. 1831-1834
直腸が特発性に後腹膜側に穿孔し当初腹膜炎症状を示さなかった症例を報告する. 症例は87歳, 女性で血便, 下腹部痛を主訴に来院した. 初診時下腹部痛はあるも腹膜刺激症状は認めなかった. 体温は36℃, 白血球増加はなく, 腹部単純写真でも異常を認めなかった. 入院し経過をみていたが, 入院後3日目の腹部CTで後腹膜気腫の増加を認め緊急手術を施行した. 腹腔内に汚染は認められなかったが, 直腸が後腹膜側に穿破して手拳大の糞便貯留腔を形成していた. 直腸を切除し一期的に吻合した. 大腸穿孔は稀に腸間膜内, 後腹膜に穿孔することがあるが, この診断には腹部CT検査が有用である.