日本臨床外科学会雑誌
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症例
グリセリン浣腸によって溶血, 血色素尿症を呈した1例
中島 麻衣子久米 真佐藤 勤萱場 広之浅沼 義博山本 雄造
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キーワード: グリセロール, 浣腸, 溶血
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2007 年 68 巻 7 号 p. 1862-1867

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抄録

結腸手術の前処置として施行されたグリセリン浣腸によって溶血, 血色素尿を呈した1症例を経験した. 症例は74歳, 女性. 盲腸癌の診断で入院した. 手術予定日早朝, グリセリン浣腸120mlを施行後少量の下血, 気分不快感が出現. 血圧, 脈拍は安定していたが血液検査で溶血を認めたため手術を延期した. その後血色素尿を認め, グリセリン浣腸による溶血と判断してハプトグロビンを投与した. 軽度の貧血を呈したが腎機能障害を伴うことなく回復したため, 2週間後に浣腸処置を行わず回盲部切除術を施行した. 頻度は低いがグリセリン液が血中に入ると重篤な溶血・血色素尿・腎障害が発生することをわれわれは認識する必要がある. グリセリン浣腸は安全な基本手技を厳守して行うと共に浣腸施行後は尿の色調変化に注意し, 溶血が認められた場合は迅速にハプトグロビンを投与して腎障害を予防することが重要と考えられた.

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© 2007 日本臨床外科学会
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