日本臨床外科学会雑誌
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症例
外傷性脾損傷を契機に発症した甲状腺クリーゼの1例
岡田 良八島 玲長谷川 有史佐久間 浩小山 善久竹之下 誠一
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2008 年 69 巻 11 号 p. 2770-2773

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抄録

症例は47歳,女性.2007年5月25日左側胸部を強打し,徐々に腹痛が増強したため,当院救急外来を受診した.腹部所見と腹部造影CT検査の結果,外傷性脾損傷,汎発性腹膜炎の疑いにて,受傷3時間後に緊急手術を施行した.32歳時バセドウ病と診断され内服治療していたが,3年前より自己判断で治療を中断していた.今回術前より甲状腺機能亢進症によると考えられる頻脈,発汗および発熱が認められたため,対症療法で経過をみていた.しかし,術後2日目に急性呼吸不全となり,外傷,手術を契機に発症した甲状腺クリーゼと判断したため,すぐに抗甲状腺薬,ルゴールおよびステロイドなどの薬物治療と人工呼吸器管理を開始したことにより,救命しえた.甲状腺機能亢進症を有する症例に対しては,常に甲状腺クリーゼを発症する可能性を念頭におき,発症を疑った場合には速やかに適切な治療を開始することにより救命率に貢献する可能性が示唆された.

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© 2008 日本臨床外科学会
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