日本臨床外科学会雑誌
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症例
急速に増大し,転移性肺腫瘍との鑑別に苦慮した肺クリプトコッカス症の1例
清島 亮岡林 剛史金井 歳雄中川 基人松本 圭五小柳 和夫
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2008 年 69 巻 11 号 p. 2827-2831

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抄録

急速に増大し,転移性肺腫瘍との鑑別に苦慮した肺クリプトコッカス症の1例を報告する.症例は72歳,男性.20年来の糖尿病を患っており,コントロール不良だった.stageIIの直腸癌に対して前方切除術が施行され,術後1年6カ月,無症状だが胸部X線にて小結節影を指摘された.CT上,左肺S6に径6mmの結節を認め,3カ月後には17mmまで増大した.良性疾患も鑑別に挙げられたが,経過より転移性肺腫瘍と診断し,胸腔鏡補助下(VATS)左肺S6部分切除術を施行した.術後の病理検査ではグロコット染色,PAS染色ともに陽性のクリプトコッカス菌体を多数認め,肺クリプトコッカス症と診断した.退院後,クリプトコッカス抗原が陰性化するまでフルコナゾールを6カ月間内服した.糖尿病など臨床的に易感染性と考えられる症例においては鑑別診断として本症を考慮する必要があると考えられた.また,良悪性の判断が困難な肺結節性病変に対しては侵襲の少ないVATSは有用であると考えられた.

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© 2008 日本臨床外科学会
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