2008 年 69 巻 11 号 p. 2986-2989
症例は46歳,男性.1992年5月,十二指腸乳頭部癌に対して膵頭十二指腸切除術を施行した.術後の病理診断ではpapillary adenocarcinomaでstageIであった.術後9年目の2002年1月14日心窩部痛を主訴に来院,胃内視鏡検査にて胃体部後壁に隆起性病変を認め,生検にてpapillary adenocarcinomaと診断された.さらに腹部CTでは残膵に腫瘤陰影を認め,胃体部後壁への浸潤が認められ,残膵から発生した膵癌と診断した.手術は膵空腸吻合部を含む残膵,残胃全摘術,脾摘出術,横行結腸部分切除術を施行した.病理組織学的には前回と極めて類似した形態のpapillary adenocarcinomaと診断された.本症例は十二指腸乳頭部癌に対する膵頭十二指腸切除術後9年を経過して残膵に発生した極めて稀な残膵癌切除症例であり,組織学的にも類似性があり,転移再発癌との鑑別も興味深いので報告する.