日本臨床外科学会雑誌
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症例
Electrolyte depletion syndromeを呈した直腸絨毛腫瘍の1例
高久 秀哉鈴木 俊繁長倉 成憲佐藤 大輔
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2009 年 70 巻 1 号 p. 137-140

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抄録

大量の粘液分泌のため,脱水,電解質異常,腎機能異常などを呈するelectrolyte depletion syndrome(以下EDS)をきたした直腸絨毛腫瘍の1例を経験したので報告する.症例は83歳,女性.2007年8月,食欲不振,全身倦怠感を主訴に当院に入院となった.多量の透明な粘液便が頻回にみられ,脱水,低カリウム血症(K:2.7mEq/l)より血圧低下,ショックをきたした.直腸指診で,下部直腸に全周性の柔らかい腫瘍を触知した.骨盤部CTで,直腸内に多量の液体貯留を認めた.下部消化管内視鏡検査で,多量の粘液を産生する全周性の直腸絨毛腫瘍を認めた.EDSと診断し,補液を行いつつ,準緊急的に腹会陰式直腸切断術を施行した.大きさ185×100×45mmの絨毛腫瘍であり,病理組織学的にはvillous adenomaであった.手術後,脱水,電解質異常,ショック状態は速やかに改善し,術後16病日に退院となった.術後1年めの現在,再発を認めていない.

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© 2009 日本臨床外科学会
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