抄録
症例は87歳,女性.2007年9月,腸閉塞の診断で近医から紹介.Howship-Romberg徴候を認めたため閉鎖孔ヘルニアを疑った.CTでは両側閉鎖孔ヘルニア,左大腿ヘルニア,小腸の腸閉塞像を認めた.閉鎖孔ヘルニア嵌頓と診断し,同日緊急手術を施行した.開腹所見では,両側の閉鎖孔に嵌頓する小腸を認め,これを用手的に整復した.陥入していた2カ所の小腸ともに壁内血腫を認めたが,壊死には至らず腸切除術は行わなかった.左閉鎖孔嵌入部に腸管径の差を認め,腸閉塞の原因と考えられた.また,左大腿ヘルニアも認めた.修復は正中開腹創から腹膜前到達法によるtension free mesh repairを行った.閉鎖孔ヘルニアは,高齢女性の腸閉塞の原因として時に経験するが,両側の閉鎖孔ヘルニアの嵌頓例を見ることは少ない.この症例に関して文献的考察を加え報告する.