2009 年 70 巻 1 号 p. 73-78
患者は併存疾患としてアルコール性肝硬変および糖尿病を持つ52歳男性.2007年4月腹痛を主訴に当院救急外来を受診.腹部単純X線検査にて左横隔膜下に腹腔内遊離ガス像を認めたため,消化管穿孔の診断のもと同日緊急開腹術を施行.術中,十二指腸球部前壁の穿孔を確認し,同部の縫合閉鎖および大網充填を行った.術後抗生剤治療を継続するも感染徴候および血液検査所見の改善はみられなかった.術8日後に腹腔内膿瘍形成を疑い腹部造影CT検査を施行.その結果,膵周囲,左腎周囲,さらに左腸腰筋に沿った後腹膜腔に膿瘍形成を認めたため,経皮的に左前腎傍腔にドレナージカテーテルを挿入した.カテーテルからのドレナージは良好であったが,感染徴候の改善はみられなかった.そこで術16日後に後腹膜アプローチで左腎周囲および左腸腰筋前面の膿瘍腔にドレーンを留置した.術後ドレナージは良好で,感染徴候および血液検査所見も改善し,術32日後に軽快退院となった.