2009 年 70 巻 10 号 p. 3053-3055
胃切除歴のある高齢者で魚骨により肛門周囲膿瘍をきたした症例を経験した.症例は84歳,男性.約1カ月前より肛門部痛があり増強するため初診.腹部CTにて肛門管周囲左側に線状の陰影を認めたため,魚骨迷入・膿瘍と診断し,炎症を局所にとどめ異物除去を検討する目的に入院.肛門周囲の発赤部皮膚を切開したが骨は摘出できず,ドレナージと抗生剤投与を開始した.その後魚骨が後方へ移動し,20日目にようやく魚骨を摘出し治癒した.胃酸度の低下も魚骨による消化管穿孔のおきやすい条件のひとつに挙げられており,特に胃切除後患者では日常生活においても注意を促す必要があると思われた.