2009 年 70 巻 12 号 p. 3600-3604
症例は59歳,女性.発熱,右下腹部痛で近医にて感染性腸炎と診断され,抗生剤治療を行うも改善せず,当院を受診した.腹部造影CT検査で腫大した虫垂を認めた.持続する発熱,右下腹部痛,虫垂腫大を認めることより,急性虫垂炎と診断し緊急手術を施行した.開腹すると径10cmの腫大した虫垂を認め,リンパ節腫脹も伴っていた.腫瘍性病変である可能性も考慮し,回盲部切除術を施行した.病理組織学的検査にて虫垂粘膜内にリンパ球様の細胞がびまん性に増殖しており,L26陽性であり悪性リンパ腫(diffuse large B-cell type)と診断した.虫垂原発悪性リンパ腫は急性虫垂炎症状を呈することが多いが,画像検査上,虫垂に腫瘤を形成している場合には,本疾患も念頭におくことが重要であると考えられた.