2009 年 70 巻 12 号 p. 3623-3627
症例は慢性腎不全に対して維持透析中の57歳男性.粘膜下腫瘍様の形態を呈する直腸癌に対して直腸低位前方切除術を施行した.術後7カ月で多発肺転移をきたしたが,FOLFIRI療法(CPT-11 65mg/m2)およびFOLFOX4療法(Oxaliplatin 32mg/m2),次いでFOLFIRI療法(CPT-11 80mg/m2),さらにBevacizumab併用FOLFOX4療法(Bevacizumab 5mg/kg,Oxaliplatin 85mg/m2)を順次導入し,いずれも特に問題なく施行可能であった.粘膜下腫瘍様の形態を呈する直腸・大腸癌は稀であり,術前診断が困難なことがある.また,維持透析中の大腸癌患者に対する化学療法は確立されていないが,今回われわれが経験した症例では,最終的に通常量のBevacizumab併用FOLFOX4療法が問題なく施行可能であった.