2009 年 70 巻 4 号 p. 1144-1149
症例は91歳,女性.突然の腹痛で当科へ入院した.腹部X線写真にて小腸と大腸の著明な拡張を認めた.腹部CTでは,肝内門脈に著明なガス像がみられ,卵巣嚢腫と推測される9.3×9.1cm大の嚢胞が,骨盤腔を占拠しており直腸を左方に圧排,その口側のS状結腸壁は肥厚し,壁内にガス像がみられた.腰椎左側に後腹膜腔気腫を伴っていた.骨盤腔内の嚢胞性病変による機械的イレウスが原因で生じた門脈ガス血症と診断し,イレウス解除を目的に緊急手術を行った.骨盤腔には,左卵巣嚢腫が時計方向に180度捻転し骨盤腔を占拠しており,卵管とともに摘出した.摘出した嚢腫はserous cystoadenomaと診断された.術中,腹腔内臓器を検索したが,壊死等の異常所見はみられなかった.
術後16時間で施行したCTで門脈内のガスは消失していた.腹水培養,血液培養は陰性であった.
術後に施行した上部内視鏡検査および下部内視鏡検査では,明らかな異常所見はみられなかった.術後経過は良好で21日目に退院した.